真夜中に海がやってきた スティーヴ エリクソン (2001/04) 筑摩書房 この商品の詳細を見る |
エリクソン
むさぼるように読みました。
エリクソンの作品では、登場人物という点が一挙につながって何本もの線ができ、それが絡み合う瞬間というのがあるように思います。また、強い情念が描き込まれているところも魅力だと思います。この作品でも、その醍醐味を堪能しました。
妙にひっかかったのは、視点人物の一人クリスティンの言葉の言葉。曰く、「人生って、自分の中で最も商品価値のあるものを切り売りしていくプロセスのことでしょ。知性にしろ、才能にしろ、カリスマ性にしろ、美にしろね。」(43)
これから何を売りにしていけばいいのか、自分の売りと信じてきたものをそのまま売りとしてよいのか、それとも価値はそもそも別なところにあってそこに目を向ける方がよいのか…などとふと考えたりするので。取り引きの結果、公私あわせてどれだけのものを手にできるのか、なんてことを考えることも増えているだけに、なんとも絶妙なタイミングでの遭遇です。切り売りの人生では、ほしいものは取捨選択したうえで手に入れるしかないのかなぁ。何も諦めないというオプションはないものなのかなぁ。