喪失記

姫野本を読み、再び膝をたたきまくり。
喪失記 喪失記
姫野 カオルコ (1997/12)
角川書店

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「恋人」であれ「夫」であれ、20代も半ばを過ぎれば、パートナーが自ずとできるものだと考える人は少なくありません。若い教え子たちしかり、同僚しかり。なんと言っても、若い頃の自分自身がそうでした。でも実際には、30を過ぎても、浮いた話もたいしてないまま地味に暮らしています。現実にあるのは、この小説の主人公理津子と同じような「静かな生活」です。 『結婚の条件』の中で小倉千加子は、男子学生の挙げる結婚の条件を4K(可愛い・賢い・家庭的・[体重が]軽い)と紹介していたけれども、理津子はこれらの条件をそこそこ満たしている存在だと見受けられます。「可愛い」という条件と重なる「容貌偏差値」は理津子本人が考えるほど低くはないようだし、「家庭的」と重なる「実用偏差値」はかなり高い。しかし彼女は、あくまでも引き立て役や仲立ちであって、男に選ばれることはない。 理津子の半生は、女としての偏差値は高さよりも披露のされ方が重要であり、プレゼンテーション能力の高い者が選ばれるということ、選ばれる女はいつまでも選ばれる(ように見せて男を選んでいる)ものでそうでない女の出る幕はないということを物語っています。 今回溜飲を下げたのは、このくだり。 ひとりでいるのが好き、だと言えるのは、果てしなく長い時間をひとりでいたことのない人間だからである。彼、あるいは彼女にとっては、ごく短い時間にひとりでいることが新鮮なのである。 「ひとりの方が、良いですって」というのは、悲喜こもごもだの煮詰まり感だのを解き放てる親密な相手がいるから言えるものだと思います。