へっぽこ講師のあれやこれや(別館)

頻繁にやる気が行方不明になる大学教員の雑記です。アカデミックな要素はかけらもありません。

耳学問

耳学問をしに、昨日は広島へ。会の雰囲気をうかがいつつ、研究発表を3つ拝聴。 第1セッションは、ヴェトナム移民のレ・リ・ヘイスリップ(Le Ly Hayslip)の自伝『天と地』(When Heaven and Earth Changed Places)に関するもの。社会経済的地位、空間的集中および言語的同化(母語を同じくする者と密集せずに生活を営めるかどうか)、異人種間結婚、人種差別、戦争が及ぼす影響という条件から、主人公のアメリカへの同化の成否を考察。 第2セッションは、マーク・トウェイン作品における"strangers"についての考察。『王子と乞食』と『まぬけのウィルソンとかの異形の双生児』における入れ替わりエピソードから、変化するのは入れ替わる個人のキャラクターではなく共同体であるとし、そのことを『まぬけのウィルソン』のデイヴィッド・ウィルソンとハックルベリーフィンの共同体への受け入れから検証。 第3セッションは、ヘンリー・ジェームズの作品と写真に関するもの。一回性の魔術的・審美的なダゲレオタイプと、大量複製される写実的な写真について、『悲劇の美神』(The Tragic Muse)を中心に考察。 専門としている時代のことということもあり、ダゲレオタイプの話は興味深かったです。自分でも調べてみよう。