へっぽこ講師のあれやこれや(別館)

頻繁にやる気が行方不明になる大学教員の雑記です。アカデミックな要素はかけらもありません。

文系院生(オーバー含む)の生活費

Twitter上で「人文系院生が、学振なしで生活するために必要なコスト試算」という記事のことが話題になっていました。この記事では、人文社会科学系の院生が必要な費用として月額27.25万円〜28.5万円と計算されています。「ざっくりした単純計算」と言うけれど、ギスギスした感じにならずに暮らそうとする場合、この試算は妥当だと思います。


私はかつて、このページで、専従非常勤時代にどのようなコスト試算のもとで暮らしていたのかを書きました。この時には、1コマ2万ほど(月額)の非常勤が10コマあればなんとか死なずすむと考えていました。具体的には…

ある専従非常勤講師の生活費の目安
米文学専攻・女・都内でひとり暮らし・地方(研究職の者がいない家)出身]

住居費 3コマ
光熱費 1コマ
通信費 1コマ(固定電話、携帯電話、プロバイダ料金あわせて)
税・年金 1コマ
研究費 2コマ(書籍、年会費、学会の遠征費などで、授業料分程度を考えた)
生活費 2コマ

というものです。


自分でも認めていたけれど、この目安はかなりざっくりとした目安です。あくまでも、「のたれ死にしないですむ」という目安。住居費をおさえるにしても、研究費のつもりのところを生活費や年金の支払いに振りかえるにしても、実際には非常勤10コマ分(この計算では20万)ではまわりません。

計算には入れていなかったけれど、国保(0.5コマくらい?)、交際費[飲み代](1コマ弱)、ジョソウ[化粧品、美容院、服など](0.25〜1コマ?)、就職活動のための旅費(1〜2コマ)といようなものが必要です。かつてまとめた目安とあわせると、非常勤の給料で13〜14コマ分のお金が必要なのです。

ここでまず、「月に2万も飲んでんじゃねーよ!」という突っこみがはいりそうですが、月に2万も飲むかはさておき、飲み代は絶対に必要でした。院生時代(オーバードクター・専従非常勤時代を含む)の私がおかしくならずにすんだのは、ゼミがあけた後に大学近くの飲み屋で仲間と飲む、学部時代の友人と飲む、バイト先の予備校の同僚と飲む…ということをして話をしたりきいたりしていたおかげだと信じています。研究会の懇親会では硬軟さまざまな話が聞けるので、これまた気持ちが保てます*1。飲み代でも、お茶代でもなんでもいいけれど、人と会うための交際費は絶対に必要。

ジョソウについても「めかしてんじゃねーよ!」と突っこまれそうですが、講師の仕事をするとなると、身なりにかまわないわけにはいきません。学生はよく見てるもので、直接コメントをしてくることもあれば、授業評価アンケートに記入してきたりします。*2今は安くてもいいものが手に入りやすいから費用はおさえられるだろうけれど、それでもやはり必要な費目。

そして、就活のための旅費。留学経験も学位もなかった私は、就職活動では贅沢など言えない立場でした。また、自主退院(単位取得満期退学)をしてから2年以内に免除職につかなければ奨学金の返済をしなければならなかったため、せっぱつまってもいました。そのため、自分でも入り込めそうな条件の公募にはとにかく応募をしたわけですが、面接まで呼んでくれたのは全て地方の学校でした。面接の際の旅費は自己負担ですから、就職活動中はどんどんお金が消えていき、「どこに借金をしようか…」というところまでいきました(ラッキーなことに、そこまでいったところで就職が決まったのですが)。というわけで、UターンやIターンも含めて就職活動をするとなると、旅費を確保しておかなければなりません。


つらつらと書いてきましたが、地方出身の文系院生が首都圏で研究活動をしていくとなると、毎月26〜27万円は必要だというのが私見です。

*1:おそれおおかったので、学会については、「大会」で発表をした場合のみ懇親会に参加していました。過去形で書いたけれど、今もそうです。

*2:男子学生はダメ出し(自分でも「今日はダメだ…」と思っているところをついてくる)、女子学生はほめてくれるという傾向があるのはなぜだろう?