へっぽこ講師のあれやこれや(別館)

頻繁にやる気が行方不明になる大学教員の雑記です。アカデミックな要素はかけらもありません。

多読教育研究会(1)

昨年12月に福岡女学院中学・高等学校でおこなわれた、英語多読授業についての研究会に参加しました。その時の講演と報告のメモです。


-酒井邦秀先生の講演

  • 「多読三原則」について

多読三原則は、(1)辞書は引かない(英英辞典であれば可)、(2)わからなければ飛ばす(分からないところは無視し、「なかったこと」にする)、(3)あわない本は投げる(話の内容が全く分からなければ、やめる)というもの。この三原則に加え、「日本語に訳さない」という点も加えたほうがよい。

  • 「多読支援三原則」について

多読支援三原則とは、(1)教えない、(2)押しつけない、(3)テストしないというもの。(1)については「教えるから、学生が学ばない」と、(2)については、学生の伸びる時期は違うものなので我慢をする必要があると、(3)については、生徒との信頼関係があればテストをしても大丈夫だろうとのこと。

(3)は、認証評価やJABEEの審査を受けるという学校の状況を考えると、難しいというのが正直なところ。

  • 多読授業をはじめるための前提

この点については、学校、教員、そして授業の3つの項目について、前提条件が提示。

学校
(1)2人以上の推進者がいる
(2)トップ(校長)の強い支持があるということ

教員
(1)自分の英語はだめだと思っている
(2)自分の授業に満足していない

授業
(1)教員自身がやさしい本を100万語は読んでいること
(普段からペーパーバックを読んでいないのなら、やさしい絵本から)
(2)一人一人の顔を見られること

これらの条件が整うまでは、ささやかな形で続けるべき。

酒井先生の講演では、「多読支援三原則」と「多読をはじめるための前提」の部分が、自分の授業をふり返るよい機会となりました。

現在の勤務校に着任して授業をはじめた際、学生の英語に対する姿勢がまったく違い、予備校や大学で教えたやりかたが通用せずに途方にくれていたところで、私は多読に出会いました。自分自身が多読を始め、直属の上司を味方につけたところで、地域貢献活動の一環として、私物を多く使って小規模の教室を始めました。勤務校の英語教育改善のためのチームで名ばかり委員長として活動したこともあり、当時の校長に多読授業のための予算をつけてもらうことにも成功しました。ふり返ってみれば、ささやかな実践をしながら「前提」を整えていくことで、多読授業の本格導入にこぎつけることができていたようです。

とくに、直属の上司と何人かの同僚が味方についてくれたことは、私にとって幸運なことでした。味方になってくれた先生方が、当時のトップの説得にもあたってくれたため、多読授業のための予算を確保することができました。また、直属の上司も多読にはまってくれたのは、学校全体で多読に取り組んでいくうえで大きな支えになっています。

それもこれも、「ささやか」に始めたのがよかったのだろうと思います。教員自身が多読の実践を積み、じわじわと味方を増やし、トップを説得するための材料を少しずつ集めていくこと、これらのことをおこなうためには、浸透するまではささやかに続けるというのがキモでしょう。