へっぽこ講師のあれやこれや(別館)

頻繁にやる気が行方不明になる大学教員の雑記です。アカデミックな要素はかけらもありません。

2014関西多読指導新人セミナー(1)

毎年2月に開催される日本多読学会の関西多読指導新人セミナーに参加してきました。タイトルには「新人」とついていますが、もはや「新人」とは呼んでもらえない人間にとっても参考になるセミナーです。2月23日(日)に武庫川女子大学付属中学校・高等学校で開催された2014年のセミナーの内容をまとめておきます。

  • 「多読授業とは—『多読ガイド』を読む」 神田みなみ(立教女学院短大)

国際多読学会(Extensive Reading Foundation)がまとめた『多読指導ガイド』の日本語版を読みながら、多読指導のポイントについてお話されました。神田さんの発表で強調されていたのは、読書スピードとレベルです。

 『指導ガイド』において、多読は「辞書無しでも十分に理解できる易しい英語の本を楽しく、速く読むこと」と定義されています。「速く」というのは「スラスラ」と置きかえられるものですが、このスピードは日本人の高校・大学生で分速80~100語程度(『指導ガイド』は分速150~200語となっているけれど、日本人学生にとってこれは速すぎ[て心が折れ]る)。普段は「辞書無しで理解できる」というところだけを強調してしまうけれど、読みの流暢さをのばしていくには読むペースも意識する必要があるということです。

 レベルについては、『指導ガイド』には「ぴったり」とか「適度の」という表現がされているけれど、「ぴったり」ということを厳密にやりすぎると授業が崩壊してしまうとのこと。「適度」というのを意識すると、伸びに応じてレベルを上げつづけなければならず(=難しめのものを読まねばならず)しんどくなるためだとか。多読を続けていくには、「適度なレベルをたくさん」というより、「非常に易しいものをたくさん」ということを心がけたほうがよいということになります。

さらに興味深かったのは、読書以外のアクティヴィティについての発言。多読授業を効果的なものにするには、アクティヴィティは読書量のアップにつながるようなもの、本に興味を持たせるようなものくらいにしたほうがよい。アクティヴィティを入れて読書量を減らすということはないように、というのです。
 多読のみの授業にだれる学生がいるとか、「話せるようにしろ」との圧力にも対応しないといけないかしら…と思ってしまうとか事情はいろいろですが、多読以外の活動で授業のテコ入れをしないといけないかな…とゆれていた私にとって、この発言に励まされたような気持ちになりました。


神田さんの発表からそれますが、日本語版『指導ガイド』に目を通していて驚いたのは、指導例で登場している学校や塾の蔵書の多さ。多読学会の貸出図書も利用して公立高校で指導をされている宮本さん(約300冊)を除くと、蔵書は2万冊以上! 蔵書が3500冊ほど(整備ができていないなどの理由で隠しているものも含めればもうちょっとある)まで増えたぜと、図書整理をしながら鼻息を荒くしていたけれど、0が1つ足りなかった…。学生から「○○の話はないんですか?」と聞かれることもあるわけだし、蔵書をさらに充実させるための活動にも励まなければならないわと思ったしだいです。