へっぽこ講師のあれやこれや(別館)

頻繁にやる気が行方不明になる大学教員の雑記です。アカデミックな要素はかけらもありません。

2014関西多読指導新人セミナー(2)

2月23日(日)に開催された日本多読学会関西多読指導新人セミナーの備忘録です。

  • 「多読用図書と活用例の紹介」 西澤一(豊田高専

西澤先生のお話はどのレベルの本をどれくらい読ませるとよいのかという点に焦点が当てられていました。ちなみに多読で使われるYL(読みやすさレベル)ですが、イメージとしてはYL1が英語圏の小1で高校生以上の人が10万語の読書で到達できるところ、YL2が「和訳しないで読む」という感覚がつかめる段階で30万語の読書で到達できるところ、YL3が自分で選書ができる段階で100万語の読書で到達できるところとのことです。

 <レベル(YL)1未満の絵本で10万語→レベル1(YL1.2以下)のGRでさらに10万語→レベル2以下のGRや児童書→レベル3で累計100万語>という流れが望ましいとのこと。西澤先生の最近の気づきとして、ORT (Oxford Reading Tree)のような絵本の後にGR1.2未満のGRをしっかり読んでいないとつまづいてしまう(レベル2〜3の児童書あたりで停滞する)とのことでした。
 ちなみに、最初に読ませるべき絵本の代表であるORTのStage3~9(全136冊)の合計語数が約7万語、内容と難易度の両方の点から学生の人気が高いFRL (Foundations Reading Library)のLevel5までの30冊で約3万語だそうです。それから、ORTなどの絵本やFRLの後に読むべきYL1.2以下のGRは70冊で約10万語とのこと。なおGRは、第1段階としてMacmillan Readers 1(15冊), Penguin Readers 1(23冊), Oxford Bookworms0(28冊)から、第2段階としてPenguin Readers2(26冊), Cambridge English Readers0(13冊), Macmillan Readers2(12冊)から読むのがよいそうです。第1段階にあたるレベルのGRは内容的につまらないものが多いのだけれど、*1口八丁手八丁でのせて読ませてやったほうが絶対によいとのことでした。
 各段階の指標は、(1) Penguin Readers Easystarts (PGR0:YL0.8で900語ほど)、(2) Cambridge English Readers 1(CER1:YL1.4で4000語ほど)、(3)Oxford Bookworms 1(OBW1:YL2.0で6000語ほど。ここが1人で読めるようになるためのターゲット)。OBW1あたりまできたら、レベル2のGRや児童書を読んで累計100万語の読書を目指す(100万語の指標はMacmillan Readers 3)。

読書のポイントは、第1段階では分析や戻り読みはせず*21冊を一気に読ませること、25~50万語の段階ではYL2.0以下のGRと児童書で40~60分間一気に読む体験をさせること。

さらに、多読指導をしていると絶対にリクエストが出る『ハリー・ポッター』ですが、累計500万語に到達してラクに読めるというところ。『ハリー・ポッター』の前にDaren Shanがある感じなのだそうです(私はDaren Shanを読んだことがないので分からないけれど)。

*1:YL1未満のGRでもおもしろいものもあります(数は多くないけれど)。個人的にはMMRの"The Lost Ship"や"The Magic Barber"、PGRの"Marcel"シリーズはおもしろいと思います。同じくらいのレベルで、Penguin Active Readingの"The Cup in the Forest"もオススメ。

*2:戻り読み防止・ペースメーカーには朗読音声を使った聞き読みが有効。