へっぽこ講師のあれやこれや(別館)

頻繁にやる気が行方不明になる大学教員の雑記です。アカデミックな要素はかけらもありません。

働かない

先日の”キティのだるま弁当”へのコメントにお答えして、500円玉と並べた画像を撮ってみました。こんな感じ(↓)です。 20070222093746
発表終了後に読み始めた『働かない』を読了。
働かない―「怠けもの」と呼ばれた人たち 働かない―「怠けもの」と呼ばれた人たち
トム ルッツ (2006/12)
青土社
各所の書評に登場している(SPAの特集記事でも(!)取り上げられたそうです)本書ですが、原題はDoing Nothing: A History of Loafers, Loungers, Slackers, and Bums in America。18世紀の「アイドラー」を皮切りに、「ラウンジャー」、「ローファー」、「ボヘミアン」、「ソーンタラー」、「フラヌール」、「ビートニク」、「バム」、「ヒッピー」、「スラッカー」と名称を変えながらも、どの時代にも現れる「怠け者」の歴史がたどられています。一貫して語られるのは、怠けることが勤労主義と労働観の両極をなしているということ、そして人はそのどちらかの極に属し続けるわけではなく、二つの極の間を揺れ動いているということ。「怠け者」という存在の文化史としても、アメリカ文学の概説書としてみても、非常に興味深い一冊。カウチでゴロゴロし続ける息子にはらわたが煮えくりかえったことが執筆のきっかけというのもまた、なんともふるっています。 個人的には、第4章の「バートルビー」に関する部分に引きつけられました。曰く、ハーマン・メルヴィルの短編の主人公であるバートルビーの発する「しないほうがいい(I would prefer not to.)」という言葉がスラッカーの生き方の核心をついている、と。 それから訳者もあとがきで指摘されていることだけれども、女の問題(怠け者の男という定義に「またしても男」とたびたび著者もつっこんでいる)や日本のスラッカー文化など、調べてみたらおもしろそうなことがこのテーマにはまだまだありそうです。それに、パリス・ヒルトンのもてはやされかたを見れば、アメリカの怠け者文化にも目が離せないでしょうし(ちなみに本書で現代の怠け者の代表として登場しているのは、アンナ・ニコル・スミス)。