「限界」を超える

内田樹の『街場の教育論』より。

 ブレークスルーというのは自分で設定した限界を超えるということです。「自分で設定した限界」を超えるのです。「限界」というのは、多くの人が信じているように、自分の外側にあって、自分の自由や潜在的才能の発言を阻んでいるもののことではありません。そうではなくて、「限界」を作っているのは私たち自身なのです。「こんなことが私にはできるはずがない」という自己評価は謙遜しているように見えて、実は自分の「自己評価の客観性」をずいぶん高くに設定しています、自分の自分を見る眼は、他人が自分を見る眼よりもずっと正確である、と。そう前提している人だけが「私にはそんなことはできません」と言い張ります。でも、いったい何を根拠に「私の自己評価の方があなたからの外部評価よりも厳正である」と言えるのか。これもまた一種の「うぬぼれ」に他なりません。それが本人には「うぬぼれ」だと自覚されていないだけ、いっそう悪質なものになりかねません。
 ブレークスルーとは、「君ならできる」という師からの外部評価を「私にはできない」という自己評価よりも上に置くということです。それが自分自身で設定した限界を取り外すということです。「私の限界」を決めるのは他者であると腹をくくることです。


街場の教育論

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