へっぽこ講師のあれやこれや(別館)

頻繁にやる気が行方不明になる大学教員の雑記です。アカデミックな要素はかけらもありません。

ブラック・ジャコバン

C.L.R.ジェームズの「ブラック・ジャコバン トゥサン=ルヴェルチュールとハイチ革命」 何年か前までうちの学校に、ある先生が非常勤で来てくれていました。その先生の講義では、研究作法から、F1の話から、ブックレビューから、学会渡世法から、とにかくあらゆることを教えていただきました。 この本は、その先生の雑談で言及されたものです。長らく積ん読状態になっていましたが、ふらりと旅に出ていた先月末に読んできました。 著者のジェームズは、Mariners, Renegades & Castawaysというメルヴィル論を表したというイメージが強かったのですが、文学のみならず、政治、クリケット、カリブ文化(カリプソなど)など多岐にわたるテーマを論じ、カリブを代表する思想家に数え上げられる存在です。 本書では、フランス革命と同時に進行した解放革命が、革命をおしすすめた民衆の側から論じられております。革命を引き起こすことになるハイチ(仏領サンドマング)の状況をおさえたうえで、トゥサン=ルヴェルチュールという元奴隷がどのようにして革命に加わり、指導者となり、国を追われて過酷な最期を迎えることになったかが、書簡や報告書などの資料をもとに語られていきます。 帯では「三国志的」という紹介のされ方でしたけれども、読みごたえは確かにかなりあります。