へっぽこ講師のあれやこれや(別館)

頻繁にやる気が行方不明になる大学教員の雑記です。アカデミックな要素はかけらもありません。

他人事とは…

最近のおとも。
「負け組」のアメリカ史―アメリカン・ドリームを支えた失敗者たち「負け組」のアメリカ史―アメリカン・ドリームを支えた失敗者たち
(2007/02)
スコット A.サンデージ

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「独立独歩の男」というアメリカの理想的男性像と表裏一体のものとして存在していた「破産者」を、書簡や日記、信用調査会社の記録などからおったもの。経済的失敗という事実を示すものでしかなかった「破産」という言葉が、監視社会の成立とともに、男のアイデンティティと分かちがたく結びついていく様が見てとれます。 前に読んだ『働かない』では、「前進せよ」と命じる社会に背を向けて生きる男たちがかなり肯定的にとらえられていたけれども、本書では、「前進」できない人間がどれほど否定されるべき存在だったかが提示されています。競争に駆り立てられたあげく失敗すれば否認されるという人生は、ただただ哀しい(とても他人事とは思えない)。『働かない』に登場するのは同じ土俵にのることは選ばなかった人たちで、「破産者」につきまとう悲壮感が微塵もなく牧歌的にすら思えたのも、不思議なことではないのかも。
働かない―「怠けもの」と呼ばれた人たち働かない―「怠けもの」と呼ばれた人たち
(2006/12)
トム ルッツ

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それから、こちら。
私小説 from left to right (新潮文庫)私小説 from left to right (新潮文庫)
(1998/09)
水村 美苗

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多和田さん、沼野さんの流れで手にとったのですが、“日本語と英語のあわい”といったような点とは無関係に、やたらと感情移入して読んでおりました。美苗のいだくためらいや違和感には、身につまされるものがあまりに多かったものですから…。ナイーヴだし、ドメ子の私がいうのも妙なことだけど。